物理とTeXに関する話題

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2015年度 センター試験 物理基礎

問題の概観

2年目のセンター物理基礎の問題は,熱力学からの出題がないという衝撃的な内容でしたが,どの設問も基本的な内容だったという印象です。大問の構成は,

  • 第1問:小問集合
  • 第2問:波動・電磁気学
  • 第3問:力学

であり,昨年度と同様でした。今後もこの傾向が続くものと考えられます。

また,力学は13問中6問を占めており,その比重が多いと言えるでしょう。とはいえ,基本的な出題ばかりでしたので,しっかりと基本事項の対策ができていれば満点も目指せたのではないかと思います。

第1問 小問集合
  • 問1:力の合成

2つの力の合成です。平行四辺形を描いて考える内容であり,力の分解とともに確認しておきたい内容です。

  • 問2:エネルギーの利用

エネルギーの種類についての出題でした。過去のセンター試験でもエネルギーの形態の出題は見られるため,教科書で確認しておく事項と言えるでしょう。冷静に考えればその場で答えを導くのも決して難しくありません。

  • 問3:圧力

答えの次元を意識するだけで,選択肢が2つに絞れます。「同じ高さにおける水圧は等しい」といった事柄が理解できていれば,(コップの中に吸い上げられている水についての)力のつり合いから答えを導くことができます。浮力が$\rho Vg$の形で書けることも確認しておきましょう。

  • 問4:自由端反射

反射波について考える場合には,「透過波を考える」のが定石です。自由端反射であれば,透過波を壁に対して対称移動させたものが反射波になりますし,固定端反射であれば,透過波を原点(壁の中心)に対して対称移動させたものが反射波になります。反射波さえ分かれば,入射波と重ねあわせるだけで合成波が得られます。

  • 問5:電磁誘導

電流が流れるのはプラスチックではなく,銅の筒であることは分かりやすいですが,落下にかかる時間の考察はやや難しいかもしれません。同様のテーマの問題が2007年の東大入試でも出題されています。筒を"円形の導線が積み重なったもの"としてモデル化し,電磁誘導の法則から,定常状態における磁石の落下速度を定量的に求める,という内容でした。今回のセンター試験の問題ではそこまで高度な考察は要求されていないでしょうから,「自然界は変化を嫌う」(つまり,落下する磁石に対し,それを妨げる向きに力が働く)ことを踏まえればすぐに答えが導けます。

第2問 波動,電磁気学
  • 問1:疎密波の振動数

グラフから波長を読み取り,$v=f\lambda $の式から$f$を計算するという定番中の定番の問題です。

  • 問2:疎密波の疎・密

"ミとソの公式"を使えればすぐに解けますが,媒質の振動方向を丁寧に変換して考えれば答えは出ます。

  • 問3:変圧器の電圧

変圧器のコイルの電圧の大きさの比は,コイルの巻き数の比と等しくなります。これは,鉄芯を貫く磁束が共通であり,それゆえコイル1巻きあたりに発生する誘導起電力の大きさが等しくなるからです。

  • 問4:変圧器の意義

センター試験で定番の問題です。変圧器において,1次コイルおよび2次コイルの電圧と電流の積$(=VI)$は等しくなります。2次コイルにおいて,電圧を大きくすれば,送電線を流れる電流は小さくなり,それに伴い送電線で発生する(つまりムダになる)熱エネルギーが減少します。

イの選択肢は$\frac{V^2}{R}$も$RI^2$も正解のように思えますが,$V$は送電線の抵抗にかかる電圧ではなく,変圧器の2次コイルにおける電圧の大きさであることに注意が必要です。

第3問 力学
  • 問1:エネルギー保存則1

弾性力の位置エネルギーと運動エネルギーを用いて,エネルギー保存則を利用するだけです。

  • 問2:エネルギー保存則2

運動エネルギーと重力の位置エネルギーを用いて,エネルギー保存則を立式するだけです。

  • 問3:鉛直投げ上げ運動における時間

「もともと鉛直上向きに$v_0$だった速度が1秒間に$g$ずつ減少し,$0$になるまでにかかる時間」というように,言葉で意味を考えれば答えは計算することなく得られます。

  • 問4:鉛直投げ上げ運動のグラフ

時刻$t$における$y$座標は, $$y=v_0t-\frac{1}{2}gt^2$$ と表せるので,グラフは放物線になります。その軸が問3で求めた$t_1$と等しくなっていることも要チェックです。

数式を持ち出すまでもなく選べたという受験生が大半だったと思いますが,滑らかでないグラフを見たら違和感を持つようにしたいところです。$y$の傾きが不連続に変化するということは,速度が不連続に変化するということであり,これは物体に撃力が加わるような状況でしか起こりえません。グラフを選ぶ問題においては,特定の点やグラフの傾きに注目して考える,という方法は非常に有効です。